湯船の横にあるドア

湯船の横にあるドア

5歳の男の子F君の自宅には、

風呂が無く、よく父親と銭湯に通っていた。

ある日のこと。

身体を洗い終え、することがなく暇を持て余していたF君は、

湯船の中でプールよろしく遊んでいた。

遊んでいると、

湯船の横に階段があり、その先にはドアがあることに気づいた。

F君はふとそのドアが気になり、

階段を昇りドアの前まで行った。

ドアノブの直下には大きな鍵穴があった。

彼はなんだか無性にワクワクしてきて、それを覗いた。

が、向こう側は何かに覆われていて何も見えない。

F君『ちぇっ、つまんねーの。』

一旦、鍵穴から顔を離したのだが、

何を思ったのか、もう一度鍵穴を覗き込んだ。

先程は何も見えなかったのだが、

今回はぼんやりとした明かりの中、

ボイラーと思しき設備が視界に飛び込んできた。

F君『おわー・・・すっげー!』

夢中になって覗いていた。

すると突然、ドアの向こうに人の気配を感じ、

「見つかったら、怒られてしまう!」

と思い、咄嗟に身を引いた。

次の瞬間、

鍵穴からマイナスドライバーの先端が突出してきた!

F君『ヒッ!!』

F君は息を呑み、その場所を離れた。

それからは決して、あのドアには近づかないでおこうと、

心に誓ったのだという。


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