大西洋で漂流した5人の壮絶なる運命

大西洋で漂流した5人の壮絶なる運命

これからは夏本番。

読者の諸君も海で遊ぶ際には十分注意されたし。

これは5人の男女の身に降りかかった、

壮絶なる運命の5日間の一部始終である。

まず最初に登場人物を紹介しておこう。

登場人物
・航海士    :ルーシー
・航海士助手  :レオン
・日雇い航海士 :ジム
・船長     :グレン
・船長の妻   :エリザベス

リーダーの航海士ルーシーは世界一周する過酷なヨットレースを、

女性で初めて完走した全米屈指のヨット乗り。

彼女の助手を務めるのはレオン。

冷静沈着で優秀な航海士である。

そして、日雇い航海士のジム。

彼はお調子者であまり信用できる男ではなかった。

船長グレンはそれなりのキャリアはあるものの、

乗船中、一時もビールを手放さない問題のある男。

船長とは言っても名ばかりで、

ただこのヨットの所有者というだけである。

最後はリゾート気分で参加した船長の妻エリザベス。

ヨットや航海に関して、全く知識を持っていないズブの素人。

5人を乗せ、アメリカ合衆国のとある港を出港した

全長15mを超える大型ヨット「グレン号」。

航行距離2500km、大西洋を6日間の航海予定だった。

5人はこの航海で命の危機に直面する。

果たして、彼らを待ち受ける壮絶なる運命とは・・・・

【航海初日の夜】

船長『ルーシー!大変だ!起きてくれ!!』

ルーシー『どうしたの?船長。』

船長『ひどい嵐の中にいるんだ!とにかく、早く来てくれ!!』

ルーシー『そんなはずないわ・・・』

ルーシーは天気図を取り出し、確認する。

ルーシー『何処から来たの?この嵐?』

レオン『わからない・・・』

甲板に上がると、交代で舵を取っていたジムが酒に酔い、

間違った航路を進んでいたのだった。

ルーシー『ジム!あなた、何してるのよ!?嵐に突っ込んでるわよ!!』

ジム『へへ、何言ってやがんだ?こんなの大したことねえだろ?』

視界の悪い夜、

潮の流れや風向きへの注意を怠ると、

一気に大きく航路を逸れてしまう。

気付けば既に猛烈な嵐のど真ん中。

さらに、とんでもないミスが重なってしまった。

船長がヨットに周辺の海図を持参するのを忘れていたのだ。

このヨットにはGPSは搭載されておらず、

自分達が現在、太平洋の何処にいるのか全く把握できない。

船長『こちらグレン号!メーデー!メーデー!沿岸警備隊、応答せよ!!』

船長『繰り返す!!こちらグレン号!メーデー!メーデー!沿岸警備隊、応答せよ!!』

船長『おい!誰か応答してくれ!どうぞ!!』

無線は繋がるも、全く応答がない。

さらなる悲劇が5人を襲う!

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船長『ルーシー!浸水だ!!』

高波の衝撃で窓が割れ、

ヨットに大量の海水が浸水して来たのだ。

船長『メーデー!メーデー!おい、誰かぁ!!メーデー!メーデー!』

船長『沈没だ!ヨットが沈んでしまう!助けてくれ!』

一旦、浸水が始まると、ヨットは2分で沈没してしまう。

こうなってしまうと、もうヨットを捨て、

海に飛び込むしかない・・・

冷静な判断をしたレオンは脱出用のゴムボートを海に放った。

全員、嵐の海に飛び込み、

必死でゴムボートまで泳いだ。

ルーシー『ヨットから水か食料、何か持ち出せた!?』

レオン『いや!何も!!』

5人は食料は勿論のこと、

水・薬、何一つとして持ち出すことができなかった。

船長『このままだと、俺達、全員死んでしまう!!』

できることは、ただただゴムボートにしがみつくことだけであった。

そのまま、夜が明けた・・・

続く