とある地方の田舎の村に、
素行の悪いの3人「A・B・C」がいた。
AとBはあまりの素行の悪さ故、
両親からは完全に見放されていた。
しかし、Cだけは違った。
Cは彼の母親から、それなりに愛情を注いでもらっていたのだ。
と言っても、かなり厳格な態度ではあったのだが。
事あるごとにCのために何かと面倒を見ていた。
だが、Cが中学3年生の時、
この母子はひどい親子喧嘩をした。
喧嘩をしている最中に父親が帰宅した。
一瞬で状況を察した父親は、
Cを無視して、黙ったまま母親に近づいていった。
髪や着衣が乱れ、
死んだ魚のような目で床を茫然と見つめている妻を抱きしめながら、
父親は息子にこう言った。
Cの父親『お前、ここまでヒドイことをする人間になっちまったんだな。』
Cの父親『母さんがどれだけお前を想ってるか、なんでわからないんだ?』
この時も父親は一切、Cを見ることはなかった。
C『うるせえよ!黙ってろオヤジ!』
Cは全く父親の言葉に耳を傾けなかった。
だが父親はCのはねっ返りに全く動じず、
淡々と話を続けた。
Cの父親『お前、自分には怖いものなんか何もないと、そう思ってるのか?』
C『ねえな。あるなら見せてもらいてえもんだぜ。』
父親は少し黙った後、続けた。
Cの父親『お前はオレの息子だ。母さんがお前をどれだけ心配してるかもよくわかってる。』
Cの父親『だがな、お前が母さんに対してこんなヒドイことをするんなら、オレにも考えがある。』
Cの父親『いいか、これは父親としてではなく、一人の人間、他人として話す。』
Cの父親『先にはっきり言っておくがオレがこれを話すのは、お前が死んでも構わんと覚悟した証拠だ。』
Cの父親『それでいいなら聞け。』
その言葉に何か凄まじい気迫みたいなものを感じたCは、
若干の恐怖を感じながらも、
『いいから、早く話せよ!』と煽った。
Cの父親『いいだろう。』
Cの父親『森の中で立入禁止になってる場所・・・知ってるよな。』
Cの父親『あそこに入って奥へ進んでみろ。後は行けばわかる。』
Cの父親『そこで今みたいに暴れてみろよ。出来るもんならな。』
父親はCの返事を待たず、
母親を連れて2階に上がって行った。
Cの父親が言う森というのは、
村の外れに小高い山があり、
その麓にある森の「ある区域」のことを指している。
山そのものは立入禁止というわけではないのだが、
山の麓は樹海のようになっており、
昼間でも薄暗く、異様な雰囲気を漂わせていた。
従って、不用意にこの森に近づこうとする物好きは、
誰一人としていなかった。
森を奥に進んで行くと途中で立入禁止になっている区域がある。
2m近い高さの柵で囲まれ、柵には太い綱と有刺鉄線、
さらに柵全体に村独特の紙垂(しで)が垂れ下がっており、
大小様々な鈴が無数に付いている。
この区域は異様に部分的なため、柵の並び方は歪で、
とにかく尋常ではないという一言に尽きる。
紙垂(しで)というのは、
神社などでよく目にする注連縄や玉串、祓串、御幣などにつけて垂らす、
特殊な断ち方をして折った紙である。
特定の日には巫女がこの森を訪れ、
森の入口付近に数人集まって儀式のようなことを執り行っている。
その日は付近一帯が立入禁止になるのであった。
儀式及び立入禁止区域のことについては、
村の一部の人間しか詳細を知らず、
他の村人の間では様々な噂が飛び交っていた。
一番多かった噂話というのは、
「カルト教団の洗脳施設がある」というものだった。
続く