従妹の出産

U子氏の従妹が、

九州のとある名家の長男の元に嫁いだ。

 

 

 

 

間もなくして、彼女は赤ん坊を身籠った。

気を利かせた名家の主は、

U子氏やU子氏の姉、他の従妹達を招待した。

 

ただ、ここで奇妙なのは全員を同時に招待するのではなく、

U子氏から始まり、

一人ずつ順番に呼んだのである。

 

この時、旅行シーズンで旅費が高額であるのも関わらずだ。

 

 

U子氏は招かれた名家の屋敷を見て、驚いた。

話には聞いていたが、

まるで横溝正史の小説にある、

「獄門島」「犬神家」に出てきそうな、

古くて大層立派な屋敷であった。

 

この家では、まだ男尊女卑の考えが根強く残っている。

 

しかし、U子氏は来客ということで、

盛大なる持て成しを受けた。

 

滞在中はU子氏専属の使用人があてがわれ、

旨い料理と酒も振舞われた。

 

それに加え、高価な着物を進呈され、

至れり尽くせりの高待遇であった。

 

翌日から一日毎に、姉や他の従妹達が到着し、

U子氏到着の日から数えて5日目に全員が揃った。

 

夕食後、皆で集まって、

『玉の輿に乗ったね』などと話していると、

従妹は語り出した。

 

 

この家系では代々、

長男の妻が出産する子供が男であった場合、

必ず流産し、且つ母親も命を落とすのだという。

 

そのため、妻の親族を屋敷に呼び寄せて、

親族を代わりに連れて行かせる、

という風習があるのだそうだ。

 

つまり、振舞われる料理は最後の晩餐であり、

進呈される立派な着物は生贄の死装束なのである。

 

しかし、そんな迷信のような話を聞かされても、

誰一人として信じる者はいなかった。

 

 

 

全員が集合してから数日後の晩、

従妹は急に産気づいた。

 

家の主は村の助産師の老婆と祈祷師を呼びに行かせ、

到着するや否や、事に当たらせた。

 

U子氏達は『出産に立ち会いたい』と、

家の主に申し出たのだが、

『それだけはならん!』と、

頑なに拒否された。

 

また、自分達にあてがわれた部屋から出ることも許されなかった。

 

 

時刻は夜中の2時を過ぎた頃。

 

『おぎゃーーーー!!』

 

元気な赤ん坊の産声が屋敷中に響き渡る。

 

この声を聞いて、

U子氏は従妹が出産した部屋へと駆けつけた。

 

助産師『元気な男の子ですじゃよ、旦那様。』

主『おー、よしよし。わしに似て立派な面構えをしとるわい。』

 

U子氏『○○ちゃん、お疲れ様。』

従妹『ありがとう。U子ちゃん。』

 

従妹『あれ?お姉ちゃんは?』

U子氏『えっ・・・?』

 

部屋中を見回しても、

U子氏の姉の姿だけが見当たらない。

 

U子氏『あれ?おねえ?』

U子氏『多分、部屋で寝てるんだと思う。ちょっと呼んでくるね。』

従妹『・・・』

 

そう言って、姉の部屋へ向かおうとした。

 

 

 

従妹『ちょっと待って!』

 

従妹はU子氏を制止すると、

使用人の一人を自分の元へ呼び寄せた。

 

従妹『U子ちゃん、そばにいて・・・』

従妹『お姉ちゃんは、あの人に呼んで来てもらうから・・・』

U子氏『う、うん。わかった・・・』

 

 

 

 

 

しばらくすると、使用人が戻って来た。

たった一人で・・・

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