W氏を含めたバイク仲間の3人が、
ゴールデンウィークの休暇を利用して、
ツーリングでY県T村に行った帰りのことである。
W氏はS県在住の男性。
Y県から帰るにはS湖付近を経由することになる。
S湖に続く国道には、幾つかトンネルが存在する。
夜の10時頃のこと。
バイク仲間3人は適当に各々流して、
道の駅で待ち合わせにしようということになり、
W氏が先頭を切って、道を流して行った。
とあるトンネルに差し掛かろうという時、
トンネルの入り口付近に黄色い人影が見えたように思えた。
W氏はよく同じくらいの時間帯に、
このトンネルを通過したことがあったが、
人間が立っているのを見掛けたのは、
この時が初めてであった。
「ゴールデンウィークだから、夜の山で星でも見てるのかな」
と思い、特に気に留めることもなく、
トンネルに進入した。
そのトンネル内部というのは、
事故防止のためであろうか、
路面が白く塗装されている。
出口が見えてきた時、
またもや出口付近に黄色い人影が立っているのが見えた。
入り口付近で見た人間と同じ服装だったことから、
「こんな時間に交通量調査でもしているのか?」
と、W氏は少し不思議に思った。
そうこう考えているうちに、
やがてトンネルを抜けた。
抜けた瞬間、先程までとは打って変わって、
辺り一面、霧で覆われており、
5M先の視界も利かない。
W氏『うわっ!何だこれ!?何も見えない!』
次の瞬間、
W氏は急ブレーキを掛けて、停車した!
トンネルを抜けて最初のカーブは左に折れるはずだ・・・
だが、目の前にあるのは右に折れるカーブ。
W氏『おかしいな・・・』
「自分の勘違いだったかもしれない」と思い、
道なりにカーブして行くと、
急に正面から車のライトが視界に入って来た!
W氏『うわぁーーー!!ぶつかるーーー!!』
なんとかブレーキは間に合い、
既の所でバイクは停まった。
その時、
音楽を聴いていたイヤホンからノイズが聴こえてきた。
ザッ、ザザーー、ザッ、ザーーーーー、ザザッ
よくよく聴いていると、
ノイズに別の音も混じっているようだった。
ザッ、ッチ、ザザーーー、アト、ザーーー、ザザッ
ザッ、モウ、ザザーーー、スコシ、ザーーーーー・・・
急停車したW氏の所に、
残りの2名のバイクが追いついて来た。
2人『どうした?なんでこんな所で止まってるんだ?』
W氏は、先程までの出来事を話した。
後日、W氏は昼間にこの道を車で通った。
その時、彼はゾッとすることになる。
カーブは、やはり左に折れており、
あの日、彼が車のライトが見えて急停車した位置から、
約10M先はガードレールがなく、
崖になっていたのだ。