ずっと音に付き纏われながら進んでいると、
やがて例の立入禁止区域の柵が見えて来た。
それは想像以上に異様なモノであった。
柵の異様さに圧倒され、
先程から聞こえていた不可解な音のことなど、
すっぽりと意識の中から抜け落ちた。
普段は幽霊や心霊といった類のことを、
全く信じない3人であったが、
その先にあるものが明らかに、
「非現実的なモノ」であると直感した。
それも並大抵ではない非常に危険なモノであると・・・
「まさか、そういう意味で曰く付きの場所なのか・・・?」
森へ入ってから初めて、
3人は「途轍もなく危険な場所にいるのではないか?」
と思い始めた。
A『おい、これブチ破って奥行けってのか!?』
B『誰が見ても普通じゃねえだろこれ!』
C『うるせえな!こんなんでビビってんじゃねえよ!』
Cは柵の異常な様子に怯んでいたAとBを怒鳴りつけ、
Cは持参した道具で柵を破壊し始めた。
道具で殴りつける度に、
無数の鈴の音が鳴り響いた。
だが、柵は特殊な素材でも使っているのかとも思える程、
異様に頑丈で、3人が持参した道具では、
全く歯が立たなかった。
結局、柵をよじ登ることになり、
有刺鉄線だけを排除した。
3人は柵を乗り越えた途端、激しい違和感を覚えた。
閉塞感のような、
まるで檻に閉じ込められたかのような息苦しさだ。
3人は踏み出すのを躊躇したが、
柵を乗り越えてしまった以上、
もう後戻りはできなかった。
先へ進むべく歩き出すと、すぐさま3人は気付いた。
ずっと付き纏っていたあの音が、
柵の内側に入ってから、バッタリと聞こえなくなったことに。
そして、Bが言った。
B『もしかしてさぁ、あの音の正体、ずっとここにいたんじゃねえか?』
B『この柵、こっから見える分だけでも出入口みたいなのはないしさ、それで近付けなかったんじゃ・・・』
C『んなわけねえだろ。オレ達が音の動きに気付いた場所ですら、こっからじゃもう見えねえんだぞ?』
C『それなのに入った時点からオレ達の様子がわかるわけねえだろ。』
普通に考えればCの言葉に合点がいった。
立入禁止区域と森の入口の間には、
かなりの距離がある。
だが、それは音の正体が「現実のモノ」であった場合の話だ。
もし仮に、
「非現実的なモノ」
であれば、話は変わってくる。
次第に怯え始めていたAとBを尻目に、
Cだけは俄然強気だった。
C『霊だか何だか知らねえけどよ』
C『お前の言うとおりだとしたら、そいつはこの柵から出られねえって事だろ?』
C『そんなやつ大したことねえよ。』
そう言って先頭を切り、ずんずん奧へ進んで行った。
柵の内側に進入してから2・30分程歩き、
薄っすらと反対側の柵が見え始めたところで、
3人は奇妙な物を見つけた。
6本の木に注連縄が張られ、
その6本の木を別の6本の縄で括り、
六角形の空間が造られていた。
柵に垂れ下がっていた紙垂とはまた別の紙垂も垂れ下がっている。
そして、その中央に賽銭箱のような物がポツンと置かれてある。
それが視界に入った時、3人は言葉を失った。
さすがの3人でも、
注連縄がどんな場で何のために用いられている物なのか、
容易に想像できた。
そういういった意味でも、
ここを立入禁止としているのは間違いなく、
目の前に広がっているこの光景のためであると直感した。
続く