姦姦蛇螺(カンカンダラ)の呪い | ページ 7

姦姦蛇螺(カンカンダラ)の呪い

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代わって、葵はこう続ける。

基本的に、山もしくは森に移されます。

御覧になられたと思いますが、

6本の木と6本の縄は村人達を、

6本の棒は巫女の家族を、

四隅に置かれた壺は生き残られた4人を表しています。

そして、6本の棒が成している形こそが、

巫女を表しているのです。

なぜこのような形式がとられるようになったのか。

箱自体に関しましても、

いつからあのような物だったのか。

私の家を含め、

今現在では伝わっている以上の詳細を知る者はいないでしょう。

ただ、最も多く語られてる説としては、

生き残った4人が巫女の家で、

怨念を鎮めるためのありとあらゆる事柄を調べ、

その結果生まれた独自の形式ではないか・・・

という事です。

柵に関しては鈴だけが形式に従ったもので、

綱や有刺鉄線はその時の管理者独自の発案でございましょう。

伯父『うちの者で「姦姦蛇螺」を祓ったのは過去に何人かいるがな、その全員が2・3年以内に死んでんだ。』

伯父『ある日突然な・・・』

伯父『事を起こした当事者もほとんど助かってない。それだけ難しいんだよ・・・』

伯父『お母さん、あれがどれだけマズイ物かは何となくわかったでしょう?』

伯父『さっきも言いましたが、棒を動かしてさえいなければ何とかなりました。』

伯父『しかし、今回は駄目でしょうな・・・』

Cの母親『お願いします!』

Cの母親『何とかしてやれないでしょうか!?』

Cの母親『私の責任なんです!どうか・・どうかお願いします!!』

母親は一向に引き下がらなかった。

自分の責任にしてまで頭を下げ、

必死で懇願し続けた。

まるで何かを覚悟したような表情で・・・

伯父『何とかしてやりたいのは、やまやまですが・・・』

伯父『しかし、棒を動かした上で、「あれ」を見ちまったんなら・・・』

伯父『お前らも見たんだろう?お前らが見たのが大蛇に食われたっつう巫女だ。』

伯父『下半身も見たろ?それであの形の意味がわかっただろ?』

A・B『・・・えっ!?』

伯父の言葉の意味が理解できなかった。

3人が見たのは姦姦蛇螺の上半身だけ・・・

B『あのぉ、下半身っていうのは?上半身なら見ましたけど・・・』

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伯父・葵『!!!』

それを聞いた2人は驚いた。

伯父『おいおい、何言ってんだ?』

伯父『お前らあの棒を動かしたんだろ?』

伯父『だったら下半身を見てるはずだ。』

葵『あなた方の前に現われた彼女は、下半身がなかったのですか?』

葵『では、腕は何本でしたか?』

A『腕は6本でした。左右3本ずつです。』

B『でも、下半身はありませんでした。』

このことを受けて、

伯父は再び身を乗り出し、2人に詰め寄った。

伯父『間違いねえのか!?ほんとに下半身を見てねえんだな!?』

A『は、はい・・・』

伯父はCの母親のほうを向くと、ニコッと笑った。

伯父『お母さん、何とかなるかもしれん!』

2人は言葉の意味を説明した。

葵『巫女の怨念を浴びてしまう行動には二つあります。』

葵『一つは、巫女を表すあの形を変えてしまう事。』

葵『もう一つは、その形が表している巫女の姿を見てしまう事。』

伯父『実際には棒を動かした時点で終わりだ。』

伯父『必然的に巫女の姿を見ちまう事になるからな。』

伯父『だが、どういうわけかお前らはそれを見ていない。』

伯父『動かした本人以外も同じ姿で見えるはずだから、お前らが見てないならあの子も見てないはずだ。』

A『見てない、っていうのはどういう意味なんですか?』

A『オレ達が見たのは・・・』

葵『あなた方が見たのは、巫女本人である事には変わりありません。』

葵『ですが、「姦姦蛇螺」ではないのです。』

葵『あなた方の命を奪う意志がなかったのでしょうね。』

葵『「姦姦蛇螺」としてではなく、巫女として現われた。』

葵『その夜の事は、彼女にとってはお遊戯だったのでしょう。』

葵『Cさんんも同じ・・・であればですが。』

巫女と「姦姦蛇螺」は同一の存在であり、

また、別々の存在でもあるのだと言う。

伯父『「姦姦蛇螺」が出てきてないなら、今あの子を襲ってるのは葵が言うようにお遊び程度のもんだろうな。』

伯父『わしらに任せてもらえれば、長期間にはなるが何とかしてやれるだろう。』

Cが助かる可能性が出てきた。

緊迫していた空気が初めて和らぐ。

Cの母親は途轍もない安堵の表情に変わった。

それを見た伯父と葵も雰囲気が和らぎ、

急に普通の人のようになった。

伯父『あの子は正式にわしらで引き受けますわ。』

伯父『お母さんには後で説明させてもらいます。』

伯父『お前ら二人は一応、葵に祓ってもらってから帰れ。』

伯父『今後は怖いもの知らずもほどほどにしとけよ。』

Cの母親『ありがとうございます!』

Cの母親『あの子が、元に戻るまで付き添ってあげたいのですが。』

伯父『ええ。構いませんよ。』

伯父『是非、そうしてやって下さい。』

AとBは『Cに一目会ってから帰りたい』

と申し出たが、

この家のしきたりということで、

それは叶わなかった。

振り返れば、この一連の騒動に、

Cの父親は一切干渉してこなかった。

それから数日後、

AのもとにCの母親から連絡が入った。

Cが死んだ、と・・・

あの後、伯父と葵は様々な方法で、

祓いの儀式を執り行ったのだが、

彼らの努力むなしく、全て失敗に終わった・・・

その死に際というのは凄まじく、

四肢が見えない何か強力な力で、

引き千切られるかのようであったという。

結果、儀式を執り行っていた部屋は、

辺り一面、夥しい量の血が飛散し、

地獄絵図さながらであったのだという。

伯父曰く、

やはりCにはあの晩、

「姦姦蛇螺」の下半身が見えていたのではないか、

とのこと。

Aがこの一報を受けた数日後、

Cの母親は失踪した。

これは後になって分かったことだが、

森の入口で特定の日に集まっている巫女というのは、

相談役になった家の人間で、

年に一回、神楽を舞ったり、祝詞を奏上するなどして、

「姦姦蛇螺」を崇める儀式を執り行っているのだそうだ。

この一年後、

立入禁止区域の柵は撤去され、

と同時に、例の区域は開放された。

これは「姦姦蛇螺」が別の場所に移された、

ということになる。