父が拾ってきた人形

怖い話

こんな話、誰にも話せるはずがない。

頭がおかしいと思われてしまうのが嫌だったため、黙っていたが、

二段ベッドの下で寝ている妹も何か不穏な気配を感じているかもしれない。

そう思ったR氏は妹に尋ねてみることにした。

不思議そうな顔をした妹から帰ってきた言葉はこうだ。

 

妹『話し声なんかしなかったよ』

 

と、いつもと変わらない様子で答えた。

ミルク飲み人形が怖くて怖くてたまらず、

早く何とかしなくてはいけないと焦るものの、

具体的に何をどうすればいいのかなんて、

子供の頃の彼女には何一つ思いつかなかった。

自分が狂ったのではないかと怯え、本当に頭がおかしくなりそうだった。

 

何故、R氏だけが聞こえるのか。

何故、R氏の元にだけ彼らはやってくるのか。

 

R氏は以前、ぼんやりとだが女性の幽霊を見たことがあった。

ともすれば彼女には霊感というものが、備わっていたのかもしれない。

故に闇の中に潜む何者かの気配を感じ取ってしまったのではなかろうか。

 

 

数日経った日の夜、

また彼らがやって来て彼女の耳元でざわざわと話し始める。

目を閉じていたため、実際に見たわけではないが、

気配で20人くらいはいた。

とにかく部屋中が人の話し声で溢れ、耳を塞ぎたくなるくらいの騒々しさだった。

その中の5人くらいが必ずR氏の枕元で

 

『ねてる?ねてる?』

 

と話しかけてくる。

顔を覗き込んでいるのは、やはりあの人形だと思った。

それは子供の声でこう言った。

 

『おきてるよ、おきてるはずだよ』

 

すると周りの声も反応して、

 

『おきてるよ、おきてるね』

 

と一斉に話し出す。

無邪気さの中にはっきりとした悪意を感じた。

 

『そろそろいいよね、もう入ってもいいよね?』

『入ってもいいかもね。入ってみる?入ってみようか?』

 

 

『さあ!入るぞ!入るぞぉ!!』

 

今までの子供の声とは打って変わって、異様な声だった。

男とも女とも、大人とも老人とも言えないような恐ろしい声だった。

 

「こいつらに体を乗っ取られるかもしれない!」

 

という恐怖で悲鳴を上げそうになった。

だが相変わらず身体は金縛りにあったように動かせず、

ただビクビクと震えるだけだった。

 

このままではダメだと思い、

初めて知っている限りのお経を頭の中で必死に唱えた。

本格的なお経を知っているわけではなかったが、

それでも知っている限りの言葉をかき集めて必死に唱えた。

 

『そんなことをしても無駄だぁ!!』

 

 

 

 

気が付くと太陽が昇っていた。

それから間もなくしてR氏が住んでいた借家が取り壊されることとなり、

彼女達一家は新しい新築の家に引っ越した。

 

あの人形はどうなったのかといえば、引越しの最中消えてしまった。

引越し作業に乗じて母親が処分したのかもしれないし、

まだ押入れの中に今もひっそりとしまわれているのかもしれない・・・

不思議なことに新しい家に引っ越してからは、

そうした怪現象が起こることはなくなったそうだ。

 

だが、大人になった今でも彼女は体調が優れない日々を送っているのだという・・・

タイトルとURLをコピーしました