父が拾ってきた人形

怖い話

するとその中のひとつが

 

『ねてるかどうかしらべてみようよ』

 

と発したのがはっきりと聞こえた。

その瞬間、R氏の身体は魚のようにビクビクと震え、

全身がぶわっと総毛立ち、鳥肌が立った。

今まで感じたことのないような恐怖で体が強張る。

 

「これは目を開けてはいけない」

「見たらきっとよくないことが起きる」

「だから彼らを絶対に見てはいけない」

と本能で感じ、彼女は心の中で、

 

「消えろ、消えろ、消えろ、消えろ」

 

と必死に祈った。

相変わらず枕元では彼女の顔を覗き込みながら、

子供達の声がヒソヒソと何かを話し合っている。

そのまま、ふぅーっと意識を失くしてしまった・・・

 

ハッとして目を覚ますと夜が明けていた。

目覚めの悪い夢だった。

彼女はそう思い、朝が来たことに心底ホッとした。

しかし、その夢はそれだけでは終らなかった。

その日から彼女は同じような夢を何度も見るようになったのだ。

 

ベッドで寝ているR氏。

するとどこからか、子供の笑い声や話し声が聞こえてくる。

最初は話し声だけだったが、暫くすると枕元を誰かがパタパタと騒々しく走り回る。

2、3人だけだったはずが、段々と増え大勢の人間が彼女の周りで話し、

楽しそうに駆けっこしたりしている。

スピーカーからザワザワと絶えず人の話し声が垂れ流されているような状態に、

彼女はひどく怯えた。

 

どれもこれも幼い子供のもの。

無邪気に笑う声、はしゃぐ声。

そして、中にはあきらかにR氏に対して悪意を持った話し声もあった。

彼らは彼女の耳元で、顔を覗き込みながら楽しそうに、

 

『ねてる?ねてる?』

 

と話しかけてくる。

返事をしてはいけない!目を開けては絶対にダメだ!

体は金縛りにあったように硬直し、指一本だって動かすことが出来ない。

 

「消えろ、消えろ、消えろ、消えろ」

 

R氏はぶるぶると震え恐怖と戦いながら、夢から覚めるのをただひたすらに祈り続けた。

また誰かが彼女のすぐそばを走っている。

パタパタと複数の小さな足音が聞こえる。

そんなはずはない。

何故なら彼女が寝ているのは二段ベッドの上。

彼らは足音を立てながら空中を駆け回っているということになるのだ。

 

そんな恐ろしい夢が続き、R氏は随分とひどい鬱状態になっていった。

その現象が「あれ」の仕業だと気づいたのは、

昼寝をしている時のことだった。

寝ているような起きている様な、夢と現実の狭間で

またしてもあの現象が起こった。

 

 

『ねてるかどうかしらべてみようよ』

 

『そろそろかな?そろそろかな?』

 

と話す子供の気配を感じ、「これはあの人形なんだ!」と

目を閉じながら直感した。

なぜそう思ったのか説明もつかないし、根拠もない。

だが絶対にそうだと思ったのだ。

 

・・・正確に言うなればそうではないのかもしれない。

R氏の顔を覗き込み、執拗に彼女が寝たかどうかを確かめに来る「それ」は

 

「あのミルク飲み人形」

 

ではなく、

 

「ミルク飲み人形の中に潜んでいる何か」

 

なのだと、そう直感したのだ。

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