とある県の高校は有名な進学校なのだが、
2年に1人は飛び降り自殺者が出る学校だった。
この学校で長く勤務する古株の老教師が言うには、
『イジメ等が原因ではなく、
「ただ生きてる意味が分からなくなった」
と言って飛び降りる者が多い』
のだそうだ。
他の教師達も、
入学早々のホームルームで、
『B棟の3階の突き当たり、ロッカーが置いてあるだろ。
あれは絶対に動かすな。
外から見れば分かるけど、
あのロッカーの裏には扉があって、
外側の階段で屋上にいける。
だけど自殺者が多いから10年前に封鎖した。
絶対に動かすな!』
と、語気を強めて、
脅すように生徒達に指導するのだという。
ところがある年、
B棟ではなくA棟の屋上から飛び降りる自殺者が出た。
こちらの屋上は特に封鎖されておらず、
屋内の階段から難なく上がることができる。
この生徒は夜中に学校に忍び込み、
誰もいなくなったところで屋上から飛び降りたそうだ。
遺体は翌朝、保健室前の花壇で見つかった。
この時、
例の老教師は事件現場で平然とこう呟いたのだという。
『みんな、そっちへ飛び降りるんだよなぁ。
屋上からはアスファルト舗装の駐車場側にも、
花壇がある保健室側にも、
どっちだって飛び降りることができるのに・・・
みんなアスファルト側には落ちない。
やっぱり、「痛くないほう」がいいって思うのかな。』
飛び降りが恒常化してしまっているこの学校では、
教師も人の死に慣れてしまっているのであろうか。
正に人の慣れというものは恐ろしき事、
極まりない。