本家に伝わる錆びた槍 | ページ 2

本家に伝わる錆びた槍

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強制的に車に乗せられ、帰りの車中でこっぴどく叱られることとなった。

祖父の説教が終わった後、おじさんは盗み聞きをしていたのが見つかった時と同じく

凄い剣幕でこう尋ねる。

おじさん『おめえら、何か見たか!?何か見てねぇべか!?』

その勢いに怖気づいた彼らは咄嗟に、

あの幽霊らしきモノを見たことを報告せず、事実を隠した。

すると二人は安堵の表情になったのが、はっきりとわかった。

この後、家に到着するまで二人は無言だった。

無言の理由は子供達だけで勝手に夜釣りに出掛けたことを怒っているのだろうと思っていた。

家に到着すると、大慌てで祖母が駆け寄ってきた。

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祖母『おめえら、何も見なかったべな!?何も見なかったべな!?』

『何も見ていない』と返答すると、フラフラ~と膝から崩れ落ちて、号泣した。

「悪いことしたなぁ」という反省心はあったのだが、

何故、大人達はここまで必死になるのか不思議で堪らなかった。

落ち着いた祖母が『くわっせ、うまかっつぉ』と言って、

夕顔の煮た物を出してくれた。

いわゆる郷土料理である。

夕顔の煮物を食べていると、ふと先日のことが思い出され、聞いてしまった。

S氏『何か部屋が開くだの閉めるだのみたいなのを、この間話してたでしょ~』

すると、たちまちにその場の空気が一変した。

祖母は泣き出し、おじさんは慌てふためく、祖父はどこかに電話を掛ける、

両親はただただうなだれて、一言も発しない。

何が何だかわからなくなったS氏達は不安感から泣き出した。

泣き止んで少しすると、おじさんに手を引かれて、盆棚がある部屋に連れて行かれた。

その部屋で10分程、拝まされることになる。

拝み終えると床に入ったのだが、祖母の泣き声や

集まって来た村人達がバタバタしている音が原因で、

なかなか寝付くことができなかった。

どれくらいの時間、それを聞いていただろうか。

知らぬ間に眠りについていた。

翌朝、起床して一番に祖父のもとへ昨日のことを謝罪しに行った。

相変わらず、難しい表情をしている。

朝食を済ませると、村のお寺に連れて行かれ、剣舞を見せられることになった。

剣舞を見終えると、お寺の本堂に移動し、長時間住職のお経を頂いた。

お経が終わると三人で何やら意味不明な会話を始めた。

おじさん『何も見てなかったって言ってました』

住職『だとしたら安心だけど油断は出来ないな』

おじさん『こっちはこっちで何とか出来るとは思うんですが』

住職『じゃあ、T(本家の屋号)に行くから』

祖父『お願いします』

三人の会話が終了すると祖父はS氏に向かってこう話す。

お前は、家の造りはだいたいわかるじゃろ?

物置にしとる部屋は知っとるな?

その部屋の奥に襖があるのはわかるか?

そこには昔から「近づくな」とは言われてたと思うがな、

そこの襖がちょっとだけ開いたんじゃ。最近。

そこにはな、錆びた槍の先がしまわれとるんじゃ。

本家の部屋は8つくらいあって、縁側が2つある不思議な造りなんじゃが、

わしが小さい時から2つ言い聞かされていたことがあったんじゃ。

「裏の縁側に回るな」ということと、「物置の部屋には行くな」ということ。

まぁ物置にしてる部屋なんざ、確かに暗がりで薄気味悪いから、

わざわざ行かなかったんじゃがな。とにかくそう言い聞かされておったんじゃ。

S氏も何となくではあったが、襖があるということは知っていた。

だが、襖の前には荷物や家財道具などが山のように積み上げられており、

襖の奥には入ろうにも入れなかった。

加えて、その部屋というのは薄気味悪かったため、近づきもしなかったという。

祖父の話を聞いて、あの荷物や家財道具は迂闊に襖の奥に入れないようにするため、

意図的に積んであったのだと思った。

祖父は続ける。

その槍の先はな、爺ちゃんの爺ちゃんのそのまた爺ちゃんの時代、

かなり昔から、ずっとあるもんなんじゃ。

爺ちゃんもな、前から「あれは近づいても見てもダメだ」と、

お前くらいの時には言われておったもんじゃ。

近づくなという理由は定かではないが、わしの爺ちゃんから聞いた話だとな、

あの槍は昔、ここで飢饉があった時に、あの槍でみんなどんどん自害していっそうじゃ。

何であの槍で自害したのかはわからんが、わしはそう聞かされた。

聞かされたのは、今のお前よりもっと大人になってからのことだったんじゃがな。

実際はどうかは分からん。

その槍は、昔からこの家が預かることになっていてな。

お前もわかるだろ?

ここら辺で中心的な家がここだってことくらい。

だから、その槍の先を預かっとるんじゃ。

押入れの中に、ただ槍の先がコロンって転がってるだけなんじゃが、

本当に危ないものなんじゃよ。

襖にはおまじないがしてあって、開かないようになっとる。

もちろん、こっちから開ける事は御祓いの時以外は絶対にないからな。

お前も見たことあるだろ?

住職がたまに来て物置部屋に入っていくの。

あれは御祓いをしとるんじゃよ。

お前ら、子供には見せちゃダメだと、住職から言われとったしな。

お前も住職やおじさんから、同じことを言われたじゃろ?

「物置部屋には近づくな」と。

じゃが、いい子じゃったよ、お前は。

ちゃんと言いつけを守っとった。

お前の父ちゃんは悪ガキじゃったから、子供の頃、襖まで近づいてしもうて、

その後、大変だったんじゃ。

とにかく、大変なものが入っとる。そっから先は婆ちゃんに聞け。

祖父の話を聞き終えたたS氏は、妙に気分が悪くなり、

祖母にその話の続きを聞く気にはならなかった。

だが、あろうことか祖父の言葉を聞いていた祖母がおもむろに近づいて来て、

続きを話し始めてしまった。

続く