呪いの腕輪「かんひも」

怖い話

ジリリリーーン!!

 

その日の晩、G氏が夜遅くまで居間で寛いでいると、

けたたましく、黒電話の音が家中に鳴り響いた。

 

G氏の祖父『誰や、こんな夜更けに・・・』

 

G氏の祖父がブツブツ独り言を発しながら、電話に出た。

電話の相手はどうやらK君の父親のようだった。

晩酌で赤く染まった祖父の顔がサアっと青ざめていく・・・

電話を切るとすぐに、祖父は物凄い勢いで寛いでいるG氏の元へ飛んでいった。

鬼の形相でG氏を無理矢理ひき起こすと、

 

祖父『G!!おま、今日、どこぞいきおった?!』

祖父『裏山、登りよったんかぁ?!おう!?』

 

祖父の剣幕に驚きながらも、今日あったことを全て報告した。

騒ぎを聞きつけて台所や風呂場から飛んできた、

母親と祖母もG氏の話しを聞くと真っ青になった。

 

祖母『あああ、まさか・・・』

祖父『・・・・かもしれん』

母親『迷信じゃなかったの・・・?』

 

G氏は何がなんだか理解できず、ただただ呆然としていた。

父親も事の状況がよく理解できていない様子であったが、

神妙な面持ちでやり取りしている三人に割って入ろうとはしなかった。

 

一段落つくとG氏・祖父・祖母の三人で、隣のK君の家に行くことになった。

祖父は出掛ける前にどこかに電話をかけていた。

何かあってはと父親もついて行こうとしたが、母親と一緒に留守番を任されることになった。

 

K君の家に入ると、今まで嗅いだことのない嫌な匂いがした。

埃っぽいような、すっぱいような。

この異臭の正体こそ、死臭というものではないかとG氏はのちに語る。

 

『おい!K!!しっかりしろ!』

 

奥の居間からK君の父親のものと思われる叫び声が聞こえてきた。

祖父は躊躇せずに、ズカズカとK君の屋敷に入っていった。

G氏と祖母は彼の後に続く。

居間に入ると、さらにあの匂いが強くなった。

 

そこにはK君が横たわっている。

その脇でK君の父親・母親・祖母が必死に何かをしているのが見て取れた。

K君は意識があるのかないのか、目は開けてはいるが、

焦点が定まらず、口は半開きで、白っぽい泡をダラダラと垂らしている。

よくよく見ると、彼らはK君の右腕から何かを外そうとしている。

 

それはまぎれもなく、あの腕輪だった。

 

が、それは先程見たときとは様子が違っていた。

綺麗な紐は解けていて、解けた1本1本がK君の腕に刺さっているように見えた。

K君の手は腕輪から先が黒く変色しており、

その黒い物はまるで腕輪から刺さった糸が、K君の手の中で動いているようだった。

 

G氏の祖父『かんひもじゃ!』

 

祖父は大きな声で叫ぶと、何を思ったかK君の家の台所に走っていった。

G氏はK君の手から目が離せないまま、ただただ立ち尽くす。

まるで皮膚の下で無数の虫が這い回っているようであった。

 

間もなくして祖父が戻ってきた。

なんと手には柳葉包丁を持っているではないか!

 

K君の両親『何するんですか!?』

 

祖父を制止しようとするK君の両親を振り払い、

K君の祖母に向かって、叫んだ!

 

祖父『腕はもうダメじゃ!』

祖父『まだ頭まではいっちょらん!!』

 

K君の祖母は泣きながら頷いた。

祖父は少し躊躇した後、K君の腕に包丁を突き立てた!

 

K君の父親『うわあぁーーーー!!』

K君の母親『きゃあぁーーーー!!』

 

悲鳴を上げたのはK君の両親だけで、K君はなんの反応も示さなかった。

どうやら、もうすでにこの時、K君の腕の感覚は喪失していたと思われる。

腕からは血が一滴も出ることはなく、

代わりに、無数の髪の毛がゾワゾワと傷口からこぼれ出てきた。

その時にはもう、先程まで皮膚の下で蠢いていた黒いモノは確認できなかった。

 

しばらくすると、近くの寺からお坊さんが駆けつけて来た。

K君の家に来る前に祖父が電話をかけていた相手というのは、

どうやらこのお坊さんだったようだ。

お坊さんはK君を寝室に移すと、夜通しお経をあげた。

G氏もK君の前にお経をあげてもらい、その日は母親の実家に帰った。

彼もまた眠れない夜を過ごすこととなる。

 

 

 

次の日、K君は顔も見せずに朝早くから両親と共に帰って行った。

地元の大きな病院に行くとのことだった。

祖父曰く、あの腕はもう駄目だが、

『頭までいかずに良かった』と何度も繰り返し漏らしていた。

 

G氏は「かんひも」について祖父に問うてみたが、

「髪被喪」と書いて「かんひも」と読むということ以外、

一切の情報を与えてはくれなかった。

後に祖母から、裏山に祭られていた道祖神のようなものは、

「阿苦(あく)」という名称のものであると教えられた。

古くから伝わるまじないのようなものであろうか。

 

もしあの晩、K君の腕の中(皮膚の下)で蠢いていた黒いモノが

頭までいってしまっていたらどうなっていたのであろうか・・・・

 

続く

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