真夜中の郵便物

怖い話

これは「かんひも」に関わったことにより、

霊感に目覚めてしまった高校生G君の話である。

 

 

霊感に目覚めたことがきっかけで友人達から、

心霊現象に関する相談を受けるようになってしまった。

霊感といっても、ただ見えるだけで、本当に話を聞くだけ。

除霊や浄霊ができる程の力はないという。

 

10月25日

その日の夕方、G君は友人のJ君に近所の喫茶店に呼び出された。

J君はサッカー部に所属しており、その部のマネージャーのYさんが、

奇妙なことで苦しんでいるため、力になってもらえないかという内容だった。

 

喫茶店に着くと、すでにJ君とYさんは着席していた。

帰宅部だったG君はJ君が出場する試合の応援をしに行ったときに、

何度かYさんとは会っており、面識はあった。

 

Yさんはクリッとした大きな目をしており、表情豊かな可愛らしい娘で、

サッカー部のマスコット的な存在だ。

しかし、久々に再開したYさんといえば、それまでの明るさは影を潜め、

いかにも不健康そうで、やつれ果て、げっそりとしていた。

 

J君『すまん、G』

 

G君の顔を見るなり、心底困り果てた様子で話しかけてきた。

 

J君『どうも、本気でやばいらしいんだ・・・』

J君『どうしたの?』

 

J君に頷くと、Yさんに話しかけた。

Yさんは今にも泣き出しそうな顔で、ゆっくりと話し始める。

 

ここからはYさんの視点での記述となる。

 

 

9月23日(相談を受けた日の1ヶ月前)

彼女は高校に通うため、親元を離れて学校近くのアパートで独り暮らしをしている。

アパートとはいえど、1階には大家が住み込んでおり、

玄関はオートロックという、高セキュリティーな物件である。

元々は古いただのアパートだったが、セキュリティー面を強化したそうだ。

 

ある日、自分のアパートの部屋で夜中に目を覚ました。

ふと時計を見ると、夜中の午前2時45分。

妙な時間に起きてしまったものだと、トイレに行こうとした。

すると、玄関の向こうの廊下で何か音がする。

 

カッ、コッ、カッ、コッ・・・ カッ、コッ、カッ、コッ・・・

 

耳を澄ませると、それは足音のようであった。

革靴やハイヒールのような、踵の硬い靴の音。

 

Yさん「こんな夜更けに・・・誰か帰ってきたのかしら・・・」

 

同じ階の誰かが帰ってきたのだと思った。

眠い目をこすりながら、気を取り直してトイレに行こうとすると、

 

カッ、コッ、カッ!

 

足音がちょうどYさんの玄関の前付近で止まった。

 

Yさん「・・・?」

 

不審に思いながら、息を潜めていた。

すると次の瞬間、

 

カコンッ!!

 

ポストに何かが投函された。

このアパートは元々は古いため、玄関ドアの下部には穴が開いており、

そこに郵便物等が投函される古い構造のポストだ。

ポストに投函された「何か」はそのまま玄関の靴の上に落ちた。

 

?『郵便・・・です』

 

ドアの向こうから、か細い男性の声が聞こえた。

そして、また足音を鳴りしながら去っていった。

 

Yさん「なんだ・・・郵便屋さんか・・・」

 

Yさんは一瞬安心しかけたものの、そんなはずはない!

もう一度時計を確認する。夜中の2時49分。

間違っても、こんな時間に郵便物を配達する郵便局員がいるわけがない。

彼女は恐ろしくなり、ベッドに潜り込むと震えながら朝を待った。

 

翌朝、ようやく辺りが明るくなった頃、ベッドから出て、

深夜に投函された郵便物を確認しに行った。

見ると、普通の官製ハガキだ。

恐る恐る拾い上げ、宛先を確認する。

 

『○山 ×夫 様』

 

宛先が自分宛でなかったことに、ひと安心した。

そして、手紙をひっくり返して文面の方を確認した。

 

・・・!

 

心臓がすくみ上がるのを感じた。

ハガキの縁が1センチくらいの幅で黒く縁取られている。

そして、空白が大部分を占める中、真ん中に無機質なパソコンの字で1行、

 

『9月27日 19時31分 死亡』

 

とだけ記されていた。

誰かのタチの悪いイタズラだと思い、そのハガキをゴミ箱へ捨てた。

そして、そのままハガキのことなど忘れ、普通に日常生活へと戻っていった。

案の定、9月27日は何事もなく過ぎ去っていった。

 

9月28日

その日は休日で、友達とファミリーレストランで昼食を取っていた。

今度の休みの計画や好きな歌手のライブの話題など、

いつものように会話は弾んで、楽しいランチのひと時だった。

 

・・・!

 

友達と話しながら、見るとはなしに見ていたテレビの画面に、信じられないものを見た。

 

『・・・昨晩午後7時30分ごろ、××市に住む・・・・○山×夫さん、3○才が、

自宅で亡くなっているのが発見されました・・・死因は・・・警察では事件と事故の・・・』

 

それはまさしく、あのハガキに記されていた名前だった。

Yさんは恐ろしくなり、慌てて家に帰った。

ハガキの名前を確認するためにである。

 

帰宅するなり、玄関の隅に置いておいてあるゴミ袋の中を漁った。

あのハガキが投函されてから、まだゴミ出してはしていなかったため、

袋の中にはまだあるはずだった。

 

が、全くもって見当たらない。

先程ニュースで報じられていた男性の氏名は間違いなく、

あのハガキに記載されてあった名前だった。

 

ここで、Yさんの話は終わる。

 

続く

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