B氏『4年後なら大丈夫だよ・・・』
何故4年という数字を打ち出したのかは今もわからないという。
ただ、当時8歳のB氏にとっての「4年後」というのは、
果てしなく遠い未来であり、
霞み掛かって到底予見の及ばない未来のことのように思えていた。
彼をそんな霧中の奥へと振り払いたい一心だけは、容易に考えに及ぶ。
そして、次に驚くべきだったのはこの苦しい返答に更に彼が返した言葉だった。
彼『うん、わかったよ。じゃー4年後ね!ぜったいだよ!』
何とも信じ難いが、彼は承諾したのだ。
まさかとは思いドギマギしつつ、
B氏『じゃあ、これからは暫く忙しいからうちに帰るね』
と言ってその場を退いた。
ここで帰らなくては、彼への発言の辻褄が合わなくなり、
そのためだけにその日は家に帰って、
夕方の子供番組の時間まで暇を持て余していた。
それからというもの、公園で彼を見かけたら、
4年後まで忙しいと言ってしまった手前、
そそくさと別の公園へと場を移して逃げ回っていたのだが、
そんな無駄な気遣いも、1、2度で終わってしまう。
空約束をして間も無いある日を境に、
彼はその公園にはパタリと現れなくなったのだ。
やはり子供とはポジティブでいて、そして身勝手だ。
B氏は4年に到底及ばぬ一ヶ月間を経ては、
彼との約束などすっかり忘れてしまい、
変わらぬ公園で、変わらぬ友達と、
そしてまた変わらぬ時間を過ごしていた。
時は流れ、中学1年生になったB氏。
かつて小学生の頃遊んでいたあの公園は、
中学への通学路の傍らにあった。
公園を過ぎてすぐのところに、
自宅であるマンションが高く聳える。
その日もいつもと同じように授業を終え、
我が家へと下校している最中、
「あの公園」の横に差し掛かった。
何やら公園を挟んだ反対側の道路に、
同年齢と思える少年が目についた。
その少年は柵、公園、
更にその向こうの柵を超えたところからB氏を見つめている。
とはいえ見覚えのない顔であるし、
ただ「見ている」というだけのこと。
気には留まったが何かの偶然か、
人違いかでこちらを見ているだけだろう。
そう思ったB氏は公園の横を抜け、
マンションの入り口に差し掛かった。
B氏の進路と、その怪しい彼の進路はおよそ1本に統合された。
同じ道に立ったところで、
彼はますます深くB氏の顔を見てきた。
ここまでとなると流石に気味が悪い。
恐る恐る相手の顔をチラっと見た。
目が合う。
彼はそのまま体の向きも視線に合わせ、
そして真っ直ぐにB氏の元へと駆け寄ってきた。
そう、4年前のあの日のように・・・
『ねぇ、4年前に約束したさぁ』
その日を境に、彼を地元で見かけることはなくなったという。
その一日に限って、彼はかつて約束を交わした場所に現れたのである。
おそらく彼は小学3年生の時期を境に、
何らかの環境の変化があって、
この公園に来ることができなくなってしまったのであろう。
しかし、彼は約束を忘れることなく、
4年前に交わしたそれを果たすためだけに、
この公園の脇に立ち、
耽々とB氏の帰りを待ち続けていたのであった。
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