代々受け継がれてきた人形

代々受け継がれてきた人形

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これは、M氏という女性が学生の頃に体験した恐ろしい話である。

M氏の生まれ育った実家は、墓の中にあった。

寺というわけではない。

M氏の実家は、玄関を入ると中央に廊下があり、左右に部屋が並んでいる。

玄関から向かって右手、建物の北側に墓地があり、

一番奥の部屋が当時のM氏の部屋だ。

窓の外には、無縁仏の放置された墓石がゴロゴロと無造作に散乱しており、

窓から手を伸ばせば、それに触れることさえ出来た。

庭の造成でユンボが入り、庭を掘り起こした時、

数々の墓石が出てきた事もあった。

またある日、飼い犬が骨を掘り出したことがあり、

それが人骨のように大きかったため、お寺の住職に見せた確認してもらったところ、

それは紛れも無く人骨であり、警察も介入することになった。

発見された骨はその昔、

この地に土葬された人間のものだったらしく、

事件性はなかったという。

しかし、M氏の家族はそこに家を建ててからというもの、

数々の事件や事故に見舞われていた。

さて、本題はM氏が中学に進学した頃の話である。

入学して間もない頃、彼女の弟が自宅前の路上で交通事故に遭った。

余談ではあるが、その2年前にM氏自身も交通事故に遭っていた。

彼女の弟はその時、生死の境をさまよう程の重体であった。

ゆえに彼女の両親はことのほか心配して、

その日は付きっきりの看病をした。

そしてM氏は、妹の面倒を見るように言われ、

自宅で妹の帰りを待つことにした。

帰宅した妹を早々に寝かしつけ、

自身の部屋で漫画を読んでいると、

異常なまでの眠気に襲われ、

そのまま寝りに落ちてしまった。

どれ程の時間が経過しただろうか・・・

彼女はふと目を覚ました。

時計の針は深夜午前2時を指している。

両親の部屋を覗いてみたが、

まだ誰も帰宅していないようだ。

M氏『まだ帰ってないんだ・・弟は大丈夫かな・・・』

そう思って部屋に戻り、

ひどく寝汗をかいたものだからTシャツに着替え、トイレに向かった。

トイレは玄関の横、北東の位置にあり、

窓からはやはりお墓が臨める。

廊下を歩いていくと、

後ろで誰かが横切った気配を感じた。

振り返ってみたが、誰もいない。

さっさと用を足し部屋に戻ったが、

自分と妹以外の誰かが家の中にいるような気配がする。

少し怖くなったM氏は部屋の電気を消し、

布団の中に潜り込んだ。

するといきなり部屋の明かりがついたような錯覚を覚えたため、

布団から顔を出し、辺りを見渡したが、

そこには真っ暗な闇が広がるばかりだった。

その直後、体が硬直して動かなくなった!

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金縛りだっ!

焦ってもがくが、身体は全く言うことをきかない。

わずかに目が動かせるだけであった。

そうこうしていると、部屋の北側の窓の前に、

男が立っているのに気付いた。

その男は軍服姿で、腰には刀を携えている。

恐る恐るその男の顔に視線をやると、

はっきりと表情が見て取れた。

眼球全体が褐色がかっていて、

顔の色は血の気は無く、青っぽいねずみ色をしている。

唇の色と肌の色とは同じで、皺の一本一本が深く多かった。

じっとこちらを見ているその男には両腕が無く、

下半身ははっきりと見えない。

ただ、その褐色の眼球だけがじーっとこちらを見ている。

一言も発することなく、ただただこっちを見ていている。

しばらくすると、その男は音も無くM氏の足元まで近づいて来た。

彼女は「助けて・・・お父さん・・・お母さん」

何度も叫ぼうとしたが、声を出すことが出来ない。

しばらくすると、どこからともなく、

「ここに住むな!」

「人形が邪魔だ!」

という叫び声が聞こえて来た。

男の口が動いているのは確認できたが、

声は別の所から聞こえて来ているようだ。

「ここに住むな!」

「人形が邪魔だ!」

何度も何度も繰り返し聞こえて来る!

恐怖で頭がおかしくなりそうになった頃、

その声とは別の違う声が聞こえてきた。

その声は明らかに女のものだった。

男が立っている場所から左側、

部屋の隅から聞こえて来る。

それはあまりに小さい声だったので、

何と発しているかは定かではなかったが、

それが聞こえた瞬間、

M氏の瞼は動かすことができるようになり、

また、体の自由も取り戻すことができた。

急いで布団を被る!

M氏「お願いします。帰ってください、帰ってください!」

M氏「お父さん、お母さん、助けて・・・」

彼女は何度も何度も心の中で、そう叫んだ。

震えが止まらず、

怖くて怖くて布団から顔を出すことが出来ない。

どのくらい経っただろうか、玄関を開ける音がして、

両親が帰宅したのがわかった。

布団から飛び出し、

先程まで男が立っていた場所を見ないようにしながら、

一目散に明かりのついている両親の元へ駆けて行った。

両親に先程起きた事の一部始終を話した。

彼女は笑い飛ばされるだろうと危惧していたが、

彼女の予想とは裏腹に、彼らの表情は見る見る青ざめていった。

『人形といえば・・・』と母親が、

寝室の奥から古い木箱を持ってきて、M氏に見せた。

箱の中には古い日本人形が納められており、

母親が自身の祖母から譲り受けた物だと教えてくれた。

それはM氏の家系において代々受け継がれてきた人形だという。

そんな人形が自宅に保管されていることすら知らなかったM氏は、

先程の軍服姿の男の言葉を思い出し、恐怖が甦って来た。

母曰く、

祖母が他界する間際に『この人形が、家族を守ってくれるからね』

と話してくれたそうだ。

その事実を知ったM氏はたちまち恐怖心が消え、落ち着きを取り戻した。

弟も大事に至らずに済んだということも、その場で知った。

人形がM氏の家族達を守ってくれたのであろうか、あるいは・・・

その晩彼女は、母親からその人形を借り受け、

枕元に置いて眠ることにした。

M氏は高校を卒業してから実家を出て、

独り暮らしをしている。

あの日以降、

彼女の身の周りで恐ろしい事や不思議な事は起きていないそうだが、

知り合った霊感のあるという知人には、

『貴方の家には守り人形がいるでしょ?』

と言われたことがあるという。

M氏の両親や弟妹には、

その後も何かと災難や事故等が降りかかったが、

すべて大事には至らなかったそうだ。

今現在は、その土地に彼女の実家は存在しないが、

時折、田舎に戻ると実家のあった前を通ることがある。

そんな時、あの日の出来事がはっきりと思い出されるとのこと。

果たして、あの日恐ろしい声に混じって、

聞こえてきた声の主は何者だったのだろうか・・・

それについては未だにわかっていないのだという。


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