頭部がないと思っていたが、
よくよく見ると胸の辺りに顔がついてる。
それがニタニタと笑っていたのだ。
娘を守らなくてはという一心で、
父親『この野郎!!』
と、大声で怒鳴ると、
その物体はすーっと消え失せた。
次いで、父親の大声に驚いた娘が跳ね起きる。
父親『ご、ごめん。起こしちゃった?何でもな・・・』
娘『はいれたはいれたはいれたはいれたはいれたはいれたはいれたはいれたはいれた』
父親『お、おい!どうした!?』
父親『しっかりしろ!○○!!』
父親が娘の肩を両手で掴み、
必死で揺すりながら、声を掛けるも、
娘は、ただただブツブツと呟くのみ。
父親『ちくしょーー!!』
父親が無心で、何とかこの場を離れようと、
イグニッションキーを回した。
すると、驚くことにエンジンがかかった!
父親は車を急発進させ、
急いで来た道を戻った。
父親『すぐに何とかしてやるからな!』
娘『はいれたはいれたはいれた・・・』
ようやく街の明かりが見えて来た。
父親『もうすぐだからな!』
娘『テン・・・ソウ・・・メツ・・・』
父親『!!!』
ちらっと横目で娘の顔を見ると、
それは自分の娘の顔とは思えない様相であった!
必死で運転していると、
父親の視界にお寺が飛び込んできたため、
そこへ駆け込んだ。
夜中ではあったが、
本堂には明かりが点いていおり、
娘を抱きかかえながら、呼び鈴を鳴らした。
奥から住職が出てきて娘を見るや否や、
住職『愚か者!何をやりおった!?』
と、父親を怒鳴りつけた!
事の経緯を住職に話すと、
残念そうな表情で、
住職『気休めにしかならんだろうが・・・』
と言って娘のためにお経をあげ、
最後に勢いよく、
肩と背中をバン!バン!と叩いた。
住職『とりあえず、今夜はここに泊まりなされ。』
住職『お父さん、話がある・・・』
住職『娘さんは、おそらく「ヤマノケ」に憑かれておる。』
父親『ヤ、ヤマノケ・・・?』
住職『49日経っても、この状態が続くようなら一生このままじゃ・・・』
住職『正気に戻ることはない。』
父親『そ、そんな・・・』
父親『何とかなりませんか!?』
住職『では、しばらく、この寺で娘さんを預からせて頂きたい。』
住職『何とか「ヤマノケ」を祓う努力はしてみよう。』
父親『どうかお願いします!!』
住職『・・・』
妻には住職から連絡を入れて頂き、
辛うじて理解を得ることができた。
一段落したところで、
住職は再び、父親に話し始めた。
住職『あのまま、お主達が家に帰っておったら、奥方にも「ヤマノケ」が憑いておったろう。』
住職『「ヤマノケ」は女に憑くもんでな。』
住職『それから、完全に「ヤマノケ」を祓えるまでは、奥方も娘さんに会えんが、よいな?』
それから一週間経っても、
娘がお寺から戻ることはなかった。
父親は来る日も来る日も、
娘の様子を見るために、足しげくお寺に通っていた。
が、
もう自分の娘とは思えない程、
日に日におかしくなっていく。
ニタニタと笑い、
不気味な眼差しで父親を見つめるのだという・・・
