叔母『ううん。でももう慣れたよ。最初は一人だったんだけどね。』
叔母『どんどん増えていってるの。みんなでずっとあたしのこと見下ろしてるんだぁ~』
叔母『あはははは!!』
普段は物静かな人物だった叔母とは思えない笑い声を上げたのだという。
おそらく、叔母のその話が真実だったにせよ、夢や幻覚の類だったにせよ、
この頃には、もうすでに手遅れだったのだろう。
その日の晩のことである。
祖母は真夜中に隣の部屋から聞こえてくる異音に起こされた。
ザッ!ザッ!ザッ!ザッ!ザッ!ザッ!
祖父母の部屋の隣は、叔母の部屋である。
それは穴を掘るような音で、気になったものだから叔母の部屋へ行ってみることにした。
すると、部屋の一か所の畳が引っぺ返されている!
そして、剝き出しになった床下で叔母がうずくまり、素手で一心不乱に穴を掘っているではないか!
祖母『何やってるの!?』
さすがに娘が尋常じゃないことを察して大声を上げた。
だが、叔母はやめない。
口許には笑みさえ浮かべていたという。
しばらくして、叔母は小声で言った。
叔母『あった・・・・』
床下から這い出して来た叔母の手にはある物が握られていた。
それは土の中に埋まっていたとは思えない程の綺麗な「小さな日本人形」であった。
叔母はそれを祖母に手渡すと、そのまま笑顔で壁際まで歩いていき、
ゴンッ!ゴンッ!ゴンッ!ゴンッ!ゴンッ!ゴンッ!
と、何度も何度も自分の頭を壁にぶつけ出した!
ゴンッ!ゴンッ!ゴンッ!ゴンッ!ゴンッ!ゴンッ!
祖母『何やってるの!?、○○!!』
慌てて止めようとしたが、叔母は物凄い怪力で払いのける。
叔母『何やってるんだろう?本当だ。あたし、なんでこんなことやってるんだろう・・・』
叔母『わからない・・わからない・・・わからない・・・・』
叔母の言葉はやがて、意味のない笑い声の混ざった奇声に変わっていった。
そして、祖母は聞いてしまったのだという。
叔母の笑い声に混じって、確かに子供の、しかも何人もの重なった笑い声を・・・
叔母はそのまま10分以上頭を壁にぶつけ続け、
最期は突然直立し、そのまま後ろ向きに倒れ込んだ。
その様子を『おもちゃみたいだった』と祖母は話す。
起きてきた祖父が救急車を呼んで、病院へ搬送されたが、彼女は命を落とした。
延髄や脳幹、頭蓋骨がグチャグチャに損傷していて、手の施しようがなかったのだ。
事の状況説明を聞いた医者は『信じられない!』という様子だった。
一般的に考えて、自分一人でここまでするのは不可能ということで、
殺人の疑いまで持たれたとのこと。
事態がここまで悪化したものだから、さすがに祖父も沈黙を貫けなくなり、
また、娘を死なせてしまった自責の念に駆られたのも手伝ってか、
お寺さんに来てもらうことにした。
住職は叔母の部屋に入った瞬間、嘔吐した。
住職曰く、昔この場所には、幼くして疫病などで死んだ水子の霊を祀る祠があって、
その上にこの部屋を作ってしまったため、あまたの子供の霊が溜まっているのだという。
『絶対にこの部屋を使っては駄目だ』と、住職にすごい剣幕で念を押された。
祖母は住職に例の人形の供養を依頼したが、
住職『持って帰りたくない!そんな物に中途半端なお祓いはかえって逆効果だ!』
住職『棄てるなり、焼くなりしてしまいなさい!』
と頑なに拒否された。
祖母は住職の教えに従って、例の人形をゴミに出すが、
いつの間やらタンスに戻って来ていたり、
燃やそうとしても全く火が点かず、飛んだ火の粉でT氏の父親が火傷したりと、
全く手に負えなかった。
困り果てて最後には、とりあえず元の場所に埋め戻すことにして、
部屋は全面的に使用禁止にすることにしたそうである。
この話の最後に彼の祖母はこう締めくくる。
祖母『とりあえず、元の場所に戻したのが良かったのか、人形はそれっきり。』
祖母『また出てこなけりゃいいけどねぇ。』

