狂気は伝播する

狂気は伝播する

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サラリーマンD氏は、

とあるワンルームマンションで一人暮らしをしていた。

このマンション、全室ワンルームにも関わらず、

いつも元気に遊ぶ子供たちの声が聞こえている。

ワンルームマンションに子供と同居するとは、

いささか無理があるように思える。

ともすれば、近所の住宅街の子供たちが、

ここを遊び場にしているのだろうか。

ある日のこと。

子供の声がD氏の部屋の前で聞こえていたものだから、

お菓子でもあげようかと、玄関を開けてみた。

D氏『こんにちは。』

男の子『こんにちは!』

D氏『今、何年生?』

男の子『4年!』

D氏『これ、あげるよ。』

男の子『ほんとに!おじちゃん、ありがと!』

このやり取りがきっかけとなり、

男の子は大層D氏になついて、

頻繁に遊びに来るようになった。

休日の前日には泊まりに来るなんてこともしばしば。

別の日。

残業で遅くなり深夜に帰宅することになったD氏。

くたくたに疲れ切って、

自宅マンションのエレベーターが下りてくるのを待っていた。

疲れのせいもあるのだろうか、

その日に限って、やけに待ち時間が長く感じられた。

エレベーターの扉がやっと開く。

吸い込まれるかのようにD氏は籠の中へと入って行った。

ドサッ!

D氏『うわっ!!』

なんと籠内の天井から薄汚れたフランス人形が落ちてきた。

D氏『子供の悪戯か?ったく・・・』

D氏はフランス人形を管理人室に預け、

ぶつくさと文句を言いながら、自宅へと帰った。

話は変わるが、

彼の部屋には襖1枚分位の大きな姿見が置かれている。

これは入居した時点で、

元々この部屋に置かれていた物だ。

しかし、時々この鏡に自分以外の何者かが映ることがあり、

今は鏡にカーテンを掛けてある。

また、朝方になると窓から何人もの人間が部屋の中に入って来る気配がする。

それは真っ直ぐ玄関に向かって出て行くのだ。

勿論、窓も玄関もしっかりと施錠してあり、

人間が侵入できるはずはない。

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生きた人間であれば・・・

このマンションには実しやかに囁かれている噂があった。

それは「屋上に死体が放置されている」というもの。

事実、このマンションでは過去に数回殺人事件が起こっている。

D氏は少年心で事の真相を確かめてやろうと、

屋上に登ってみることにした。

だが、屋上へと通じる階段の途中で行く手を阻まれることになる。

この先へは行くなと言わんばかりに、

家具や寝具が無造作に置かれていたのだ。

理由を管理人に問うてみたが、

あれやこれやとはぐらかされ、

納得のいく返答は得られなかった。

次の日、

マンションのゴミ置き場で異臭騒ぎが起こった。

ゴミ置き場にはコンクリート作りの小屋があるのだが、

住民たちは、その中から耐えがたい異臭がすると管理人を巻き込んで騒いでいる。

やがて、警官数名が到着し、

住民たち含め、大人数で何やら話し始めた。

小一時間経った頃、

警官たちは小屋にブルーシートを被せ始めた。

小屋の中で何かが見つかったに違いない・・・

D氏は一連の流れをマンションの通路から見下ろし、眺めていた。

それから数ケ月後のこと。

仕事から帰って疲れていたD氏は、

テレビをつけたまま寝むってしまった。

明け方、ぼんやりと目が覚め、

時計を確認すると起床時間までは、

まだ2時間ちょっとある。

二度寝をしようと寝返りをうった。

するとテレビの前で男の子が一人、

体育座りをしている。

D氏『君、悪いけどさ、7時になったら起こしてくんない?お願いね。』

D氏『ああ、そっか。もういないのか・・・おやすみ。』

彼は再び夢の中へと帰っていった。

ピーンボーン

間もなくすると、チャイムが鳴った。

D氏『誰だ?こんな朝早くに・・・』

D氏『はーい!今、出まーす!』

ガチャ

玄関を開けると、

私服姿の中年男と20代くらいの若い男が立っていた。

中年男『Dさんですか?』

D氏『はい。そうですけど・・・』

中年男『○○県警の者です。なんで来たかわかるよね?』

D氏『・・・』

その直後、

D氏は数名の男達によって連行されて行った。

翌日・・・

住民A『また、あそこの部屋の人が殺人事件起こしたんだって。』

住民B『あら、やだ。まあ~怖いわね~。』