大学生M氏は大学の寮に入居していた。
ある年の5月にそれは起こった。
この大学の寮というのは古戦場の近くに建っており、
さらに近所には戦死者の霊を祀るお寺があった。
そして、寮の隣の竹林には首塚があり、
M氏が入居している真下の部屋では以前、
首吊り自殺も発生している。
従って、霊感が少しでもある人間は、
この寮には入寮するどころか近寄りもしなかった。
入居している学生というのは霊感など一切なく、
ましてや寮に入寮するまで、
金縛りのひとつも経験したことがないような人間であった。
しかし、大抵入寮して2、3ヶ月以内には奇妙な体験をするのだという。
その年、新入生のAはM氏の部屋の廊下を挟んで向かいの部屋へ入寮してきた。
Aの部屋は窓から竹林が臨め、
数ある寮の部屋の中でも、奇妙な体験をする学生が一番多い部屋だった。
しかし、Aは全くそのようなことは気にしてない様子であった。
ゴールデンウィーク中のこと、
寮に入居している学生のうち予定のない者達が集まり、
麻雀をすることになった。
そのメンバーの中にはAもいた。
麻雀に興じていると、
寮で起こる奇妙な現象についての話題が上がった。
M氏『A、お前そろそろ体験したんか?』
A『すこしだけっすね』
M氏『お前の前にあの部屋におった先輩は、「窓開けて寝てたら竹林から生首が飛んできた!」って言っとったぞ』
A『ええ、飛んできましたよ。』
M氏『!!・・・で、どうした!?』
A『別にどうも。』
A『なんか金縛りとかになって腹立ったんで、「やれるもんならやってみろ!」て思ってたら消えました。』
M氏『・・・』
それから数週間後の5月末頃、
Aはバイクでツーリング中に大きな交通事故を起こし、
首の骨を骨折した。
救急車で病院へ搬送されたのだが、
4日もの間、昏睡状態が続き、息を引き取った。
その後も、この寮では奇妙な現象が絶えないのだという。