【漂流3日目】
嵐は去った。
だが、5人を襲う新たな恐怖が・・・
強烈な喉の渇き、
重度の脱水症状だった。
皮膚や粘膜が乾燥し、顔面に赤い斑点が・・・
激しい頭痛や痙攣、加えて意識障害を引き起こし始めた。
ルーシー『レオン、今私達、どこにいると思う?』
レオン『さあ、はっきり分からないけど、岸から300km以上は離れているだろうな・・・』
エリザベス『そんな・・・そんなことって、あんまりですわ!』
ジム『うう・・・おしまいだ・・・』
この時、5人は岸から約370kmの地点を漂流しており、
さらに西へと流され続けていた。
日が沈むと、異常な行動を取る者が現れた。
ルーシー『ちょっと、あなた達、何してるの?やめなさい!死ぬわよ!!』
ジム『うっせー!かまうんじゃねー!!』
喉の渇きに耐えかねた船長とジムが海水を飲み出した。
ルーシーも喉の渇きは限界に達していたが、
この状況下で海水を飲むことは禁忌だということを熟知していた。
海水を飲むと血液中の塩分濃度が上昇し、
体内を流れる血液がドロドロの状態になる。
そして、血液循環に異常をきたすのだ。
その結果、恐ろしいことが起きる・・・
【漂流4日目】
船長『おいおい・・・見ろよ、あれ・・・陸だあぁぁ!!!』
ジム『陸が見えるぞ!!陸が見えるぅぅ!!!ハハハハハ!!!』
勿論、そこに陸などあるはずもない。
レオン『落ち着け。ここは大西洋のど真ん中だ。陸などありはしない・・・』
ジム『黙れ!!俺には陸が見えてんだあぁぁ!!』
2人は海水を飲んだことによる幻覚症状を引き起こしていた。
血液がドロドロの状態になることで、
脳に十分な酸素が行き渡らなくなり、
それに反応して脳が大量のドーパミン(快楽物質)を分泌する。
そして、幻覚症状を引き起こすのだ。
覚醒剤など違法薬物を摂取した時と同じ状況に陥っていた。
船長『ちょっと、みんなここで待っててくれ!車を取ってくるよ。』
レオン『そんな物、どこにあるんだ?』
ルーシー『そうよ、グレンの言うとおり。車なんて無いわ・・・』
船長『えへへへ・・・ちょ、ちょっと、い、行ってくるよ。』
そう言って、船長は海に飛び込んだ。
エリザベス『あなた、何なさってるの?早く、お戻りになって!』
船長が飛び込んだ海の中には、人喰い鮫の群れ。
ありもしない陸を目指して必死に泳ぐ。
そして、彼は鮫の餌食となり、帰らぬ人となった・・・
エリザベス『そんな・・・死んでしまい・・・ましたの?』
絶望感がボートの上に漂う。
特に最愛の夫を失ったエリザベスは生きる気力を失い、
みるみるうちに衰弱していった。
ルーシー『なんとかしないと・・・』
レオン『・・・』
さらなる幻覚が4人を襲う。
ジム『ちょっくらコンビニ行って、ビールと煙草買ってくら。』
レオン『コンビニなんて行けるわけないだろ。俺達、海の上で漂流しているんだぞ?』
ジム『なーに、すぐ帰って来っから、待ってろって。へへへ・・・』
そう言うとジムは海に飛び込んだ。
ルーシー『何やってるの!?早くボートに戻りなさい!』
ジム『嫌だね。今からコンビニ行くんだからさ・・・へへ。』
その時!!
バシャバシャバシャ!!
海面の一部がジムの血で染まった。
ルーシー『きゃあーーーー!!!』
残る3人にはこの状況から生還する手立ては何もない・・・
そして、漂流4日目の夜を迎える。
エリザベス『フーッ、フーッ、フーッ、フーッ・・・』
夫を失ったエリザベスに異変が。
エリザベス『うぎゃあぁぁーーーー!!!』
突然、ルーシーに掴み掛かり、首を絞め出したのだ!
ルーシー『あっ・・・うぐっ・・・や・・・やめ・・な・・・さい・・・』
エリザベス『あがあぁぁぁーーー!!!』
それを見ていたレオンは無い力を振り絞って、
エリザベスをルーシーから引き離した。
エリザベスの瞳は狂気に満ち溢れ、
完全に正気を失っていた。
夫が死に、助かる見込みもない状況下で、
心が壊れてしまったのだ。
レオン『彼女はもうダメだな・・・』
静かに頷くルーシー。
続く

