デンワバンゴウヲオシエテクダサイ

デンワバンゴウヲオシエテクダサイ

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サラリーマンO氏は電車に揺られながら、帰路に就いていた。

携帯電話を操作していると、

隣に座った大柄な黒人男性がずっとこちらを見ていることに気づいた。

睨んでいるというわけではないのだが、

物凄い眼光で見つめていたものだから、

「携帯嫌いなのかな?」と思ったO氏は、

慌ててバッグにしまった。

手持ち無沙汰になり、ぼーっと車窓を眺めていると、

『ドコノエキデスカ?』

と、突然、黒人男性が声を掛けてきた。

意外に上手な日本語に驚いたO氏であったが、

「ああ、話し掛けたかったから見てたのか」と思い、

O氏『○○駅ですよ。そちらは?』

と、尋ねると

黒人男性『○○○○○デス』

と、国の名前を答えた。

「意味が伝わらなかったのかな?」と苦笑で返した。

O氏は偶然、テレビ番組を観て、その国名を知っていたため、

O氏『遠いですね!』

と、番組で見た風景を思い出しながら言った。

それを皮切りに、

どういった仕事に就いているのかとか、

趣味は何だとか、本当に色んな話をした。

男は、車のディーラーのような仕事をしているのだと言う。

『上司と反りが合わない』と愚痴を溢し始めたものだから、

「日本のサラリーマンと変わらないな」と、

何だか微笑ましくなった。

会話は絶好調に盛り上がっていたのだが、

男が降りる駅がだんだんと近づいて来た。

すると突然、

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黒人男性『デンワバンゴウヲオシエテクダサイ』

と言ってきた。

「さすがにコレはマズいんじゃないか」と嫌な予感がして、

『それはできません。』と、きっぱり断ろうとした・・・

しかし、今日会ったばかりとはいえ、

今まで親しく話していたものだから、

気が引けてしまい柔らかく断ろうと、

O氏『いやー、携帯変えたばかりで、番号覚えてなくって・・・』

と返答した。

すると、

黒人男性『ソレ、メニューオシテ0オセババンゴウデマス!』

と、要らぬ余計な知識を披露してきた。

内心、「なんてことだ・・・」と思いながらも、

番号を教えてしまう形となった。

「まあ、面倒になるようだったら着信拒否すればいいだけのことだ・・・」

と、その時は軽い気持ちでいた。

その晩、さっそく彼から電話が入った。

内容はというと上司に対する文句。

O氏も共感できる部分があったので、少し付き合うことにした。

30分程続き、電話の最後で、

黒人男性『マタ、ソウダンシテモイイデスカ?』

O氏『はい・・・』

と言って、その日は電話を切った。

次の日は仕事中に電話が掛かってきた。

だが、勤務中で手が離せなかったということもあり、

電話には出なかった。

就業後も疲れていたため、

敢えて折り返しはせずに、就寝した。

それからは毎日のように電話が掛かってきて、

さすがに辟易して、ついに着信拒否をすることにした。

そんなことも過去になりつつある1ヵ月後のこと。

急に自宅に来客があった。

ピーーンポーーーン

インターホンのカメラを見てみると、

二人の警官が立っている。

「警官!?」

特段やましいことはなかったのだが、

急に警官が自宅に来たことに驚いてしまった。

O氏『はい・・・』

警官『Oさんのお宅ですか?』

O氏『ええ・・・そうですが・・・』

警官『○○さんという人間をご存知ですか?』

警官が尋ねてきた名前は、あの黒人男性の名前だった。

立ち話するのも何なので、警官を自宅に招き入れた。

警官の一人が神妙な面持ちでこう切り出した。

警官『○○さんは2日前から行方不明になってまして。』

警官『この男、実はとある事件の容疑者なんですが・・・』

O氏『!!!』

警官の話を要約するとこうだ。

以下、O氏が電車で知り合った黒人男性をXとする。

2日前、Xの上司が何者かに殺害された。

上司の自宅近くにはXの所有車が放置されてあり、

車内には携帯電話だけが残されていたのだそうだ。

その携帯電話のメモ機能の中に、

「Oさんがいけないんだ。相談にのってくれると言ったのに!」と、

英語で書かれていたという。

それを聞いてO氏はゾッとした。

「何回も電話を掛けてくれてたのに・・・それを無視したからなのか?」

混乱しているO氏に警官が言う。

警官『そして、そのメモにあなたの住所が書かれていたので・・・』

O氏『何ですって!?』

耳を疑った。

というのも、Xに住所まで教えた記憶がなかったからだ。

心底恐怖を覚えたO氏は、

Xと知り合ってからの経緯を洗い浚い警官に話した。

警官は『とにかく何かあったら連絡するように』

とだけ言い残して帰って行った。

しかしO氏は、Xに自宅の住所が割れていることに加え、

着信を拒否し続けたことに対して、

恨みを買ってしまったかもしれないという不安から、

しばらくの間、友人宅に泊めてもらうことにした。

恐怖心も和らいできたある晩のこと。

ピザを注文して、夕食を済ませることになった。

空腹は絶頂に達し、

今か今かと首を長くして待っていると、

ピーーンポーーーン

チャイムが鳴った。

友人『すまん、O!今、手離せなくって出れないんだ!』

友人『代わりに受け取ってくれ!』

O氏『了解。』

ガチャ。

玄関のドアを開けると、

帽子を深く被った大柄な配達員の姿がそこにはあった。

人手が足りず、調理中に配達に駆り出されたのであろうか、

配達員の制服のシャツはピザソースだかハバネロソースだかが、

べっとりと付着していて、とても汚れていた。

「今日、ピザ屋忙しいのかな~」と思いながらも、

O氏『おいくらでしたっけ?』

財布の中身を見ながら、尋ねると、

配達員はこう言った。

『Oサン、ココニイタンデスカァ~』