女子高校生N氏の中学時代に親しかった友人T氏が亡くなり、
彼女の告別式に参列することになった。
亡くなった友人というのは中学時代、
友人と呼べる存在はN氏だけであったため、
告別式当日、同級生の参列者は彼女だけであった。
焼香を終え、帰ろうとすると後ろから声を掛けられた。
?『おーい!N!Nだろ!?』
聞き覚えのあったその声に振り向くと、
それは中学時代の担任の教師であった。
N氏『あ、○○先生。お久しぶりです。』
元担任『お前ら、仲良かったもんなぁ。辛いだろうけど、元気出せよ。』
N氏『はい・・・お気遣いありがとうございます先生。』
元担任『で、今日はここへどうやって来たんだ?』
N氏『電車です。』
友人T氏は中学を卒業するとともに、
当時の住所から30km程離れた場所に引っ越ししていた。
そのため、彼女は告別式の会場に電車を利用してやって来ていた。
元担任『じゃー、帰る方向一緒だし、乗ってけよ。』
N氏『いやでも、申し訳ないですよ。』
元担任『いいから、いいから、気にするな。』
N氏『では、お言葉に甘えて・・・』
N氏は友人を亡くしたショックから、車内では放心状態だった。
告別式の会場を出発して、どれほどの時間が経ったであろうか。
ふと気付くと車は住宅街から離れ、人気のない山道を走っていた。
N氏『先生?どこへ向かってるんですか?』
元担任『ああ、来るとき国道が工事中でこの道を迂回して来たんだ。』
N氏『そうなんですか。』
元担任『ちょっと時間かかるけど、心配するな。ちゃんと送るよ。』
そう言って、元担任は尚も車を走らせた。
そして、突然何もない路肩に車を停車した。
N氏『先生?どうかしました?』
元担任『ん?お前もちゃんと送ってやらないとな・・寂しがるだろ?』
元担任『それにさっきも言ったろ?ちゃんと送ってやるって・・・』
元担任『Tのところになあ!!』
元担任は素早くダッシュボードからロープを取り出し、
それをN氏の首に巻き付けて来た!
そのまま力いっぱいグーッと締めつける。
N氏『せ、せん、せ、い。く、くる、し、や、やめ、て』
元担任『苦しいのは今だけだ。心配するな。』
元担任『Tもこの場所で送ってやったんだぞ~。』
N氏はじたばたと抵抗するが、腕力では到底敵わず、
だんだんと首が締まり、意識が遠退いていく。
すると次の瞬間、
元担任『T、T!?』
元担任はN氏が座っている助手席側のドアウィンドウガラスを見つめて、
恐怖におののいた表情をしている。
瞬間、首を締める力が弱まったため、
手を振りほどいて、車外へ飛び出した。
N氏『ゲホッ、ゲホッ、ゲホッ!』
N氏『だ、だれ、か・・・ゲホッ、ゲホッ!』
運良く対向車線の先に、車のヘッドライトが見えた。
N氏は決死の覚悟で対向車線に飛び出し、助けを求めた。
車はあまりスピードを出しておらず、余裕を持って停車した。
?『どうかしましたか!?大丈夫ですか!?』
車から降りて来たのは二人の警官だった。
N氏『助けてください!』
N氏『先生に・・あの車に乗ってる男に殺されそうになったんです!』
元担任の車を指差した。
警官は懐中電灯でN氏の首元を照らし、
ロープで絞められた痣を確認した。
そして、もう一人の警官に顎でクイッと指示して、
車を確認させに行かせた。
その後、元担任はパトカーで連行されて行った。
警官曰く、確認しに行った時、
彼は車内でガタガタと何かに怯えていたのだという。
元担任は警察の事情聴取の際、T氏を殺害したことを自供し、
N氏の件と合わせて、逮捕されることとなった。
あの日、N氏には見えなかったが、死して尚、
命を救ってくれた友人に対する感謝の念は絶えないのだと語る。