赤いクレヨン

とある夫婦が、安い値段で一軒家を購入した。

 

駅から程近く、なかなか広い物件であったため、何一つ不満などなかった。

しかし一点だけ不思議な点があった。

それは何故かいつも廊下に赤いクレヨンが転がっているのだ。

 

妻が何度拾っても、それは転がっている。

最初はさほど気に留めず片付けていたが、

次の日も、そのまた次の日も転がっている。

廊下の決まった一定の場所に・・・

夫婦の間に子供はいない。

 

さすがに気味が悪くなった夫婦はこの家を購入した不動産屋に相談することにした。

不動産屋は重い表情で家の間取り図を取り出してきた。

間取り図をよくよく見ると明らかにおかしいところがある。

 

実際の部屋数よりも間取り図の部屋数が一つだけ多いのだ。

その場所というのが、いつもクレヨンが転がっている廊下付近。

夫婦は不動産屋に説明を求め、問い詰めた。

 

すると不動産屋は重い口を開き、こう話した。

 

あの家には以前、男の子と両親の3人家族が住んでいた。

男の子は両親にひどい虐待を受けており、

ろくに食事も与えられず、部屋に閉じ込められていた。

やがて男の子は餓死し、両親はすぐに引っ越していった。

 

その後、家はきれいに片付けられ、新しい住人が入居したのだが、

『あの部屋に入ると気分が悪くなる』というクレームを残し、すぐに退居してしまった。

次にやってきた住人も同様に。

 

仕方なしに不動産屋はその部屋を壁で塞ぐ形でリフォームした。

そして、その後に入居したのがあなた達夫婦なのだ、と。

 

クレヨンもその部屋が原因なのかもしれないと考えた夫婦は、

真相を解明すべく、不動産屋立会いのもと、閉ざされた壁を壊すことにした。

壁を掘り進めていくと、釘で打ち付けられた板が出てきた。

 

どうやら部屋への入り口のようだ。

その板を破壊すると、そこには確かに空間があった。

廃墟のような異様な雰囲気が漂っている。

 

二人は中へ入ってみると、壁と床が赤くなっているのが何となくわかった。

しっかり確認しようと、夫が懐中電灯を取りに行き、その場を離れる。

妻だけが取り残されたのだ。

 

戻った夫が妻に近寄ると、彼女はカタカタと小刻みに震えている。

暗闇に目が慣れてしまった彼女の視界には、おそらくそれが映されていたのだろう・・・

 

夫は懐中電灯の明かりを周囲に当て、部屋中を見回した。

その瞬間、自身の体から血の気がさーっと引いていくのを実感した。

 

壁、床一面に赤いクレヨンで文字が書かれていたのだ。

 

 

 

 

ごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさい・・・

ここからだしてここからだしてここからだしてここからだして・・・

おとうさんおかあさんごめんなさいここからだして・・・・

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