Aの兄の様子がおかしくなった。
交際相手との一泊旅行から帰ってきたAの兄の様子が、どうにもおかしい・・・
ずっと部屋に閉じ籠り、食事にも顔を出さない。
厳格な両親を持つ彼女との初めての旅行ということもあって、
旅行前はかなりウキウキしていたのだが・・・
彼女は女友達と旅行に行くと両親に嘘をついて、兄と旅行に行ったようだ。
昼飯前にさすがに心配になったAはドア越しに声をかけてみた。
A『兄ちゃん、どうしたん?』
A『Yさん(彼女)とケンカでもしたん?』
返事がない・・・
A『・・・兄ちゃん?』
しばらくして、低くかすれた声で返事が返ってきた。
兄『Yから電話あったら…俺はいないって言ってくれ』
A『もー!やっぱりケンカかよ?』
A『まぁ、とりあえず飯くらい食べろよ』
兄『・・・・』
それから何度か呼び掛けたが、もう兄からの応答はない。
Aは諦めてリビングに戻り、母親の作った焼き飯を食べた。
夕方、自宅の電話が鳴った。
普段は母親が電話に出るのだが、買出しに出掛けていたため、Aが受話器を取った。
Yさんからだった。
Yさん『・・・Yですけど。○○さん(兄の名前)いますか?』
一瞬、本当のことを言おうか迷った。
しかし、自宅の電話にかけてくるということは、兄が携帯にでないということだ。
兄の頭が正常な状態でない今、下手なことを言ってしまって、
余計に事態が悪化することを危惧したAはこう答えた。
A『スミマセン。今ちょっと出かけてて…いつ帰るかも分からないです』
Yさん『……見つけた』
A『・・・え?』
ガチャ。ツーツーツー・・・
何だか嬉しそうにそう言って、Yさんは突然電話を切った。
心なしか切る直前、『フフフっ』という笑い声も聞こえた気がした。
何となく嫌な気分になったAは気を紛らわすため、
録画してあったバラエティー番組を視聴することにした。
その日の夜、自宅のインターホンが鳴った。
母親『はーい!』
Y『Yですけど・・・』
時刻は午後10時を回っている。
門限が厳しいYさんがこんな時間に外出するなんて、
余程、重要な要件があるのだろう。
母親はAに「どうしようか」と目で訴えてきたが、
とりあえずこんな夜更けに女性、
ましてや兄の交際相手とインターホン越しにやり取りするのは、
気が引けたため、玄関までは入ってもらうことにした。
母親『ちょっと待ってねー』
母親が声をかけながら玄関に向かう。
その瞬間、二階から兄が何かを叫んでいるのが聞こえた。
カチャリ。
玄関を開ける音がする。と同時に!
母親『ギャーーーッッッ!!!』
母親のまさに耳をつんざくような悲鳴が聞こえた!
続く