小学校に上がったばかりの女の子Rちゃんの話である。
彼女は登校初日に同じ幼稚園出身のAちゃんと遊んだ。
このAちゃんという女の子は確かに本来同じ小学校に入学する予定ではあったのだが、
卒園直前に両親の都合で引っ越してしまい、
遠方の小学校に入学したはずだった。
前日の入学式でも見かけなかったし、
やはり何かの事情でこの小学校に入学することになったのだと深くは考えなかった。
RちゃんとAちゃんは別々のクラスに振り分けられていたのだが、
顔なじみと言うことで休み時間に一緒に学校探検をすることになった。
この時、何気なしに事情を尋ねてみることにした。
Rちゃん『ねえ、Aちゃん、どうしてこっちの小学校にいるの?』
Aちゃん『んん~・・・わかんない。』
Rちゃん『引っ越したんじゃないの?』
Aちゃん『わかんない・・・』
何を聞いてもAちゃんは『わかんない』の一点張り。
加えて、引っ越しの話を持ち出すと表情が暗くなったように思えた。
次の日、RちゃんはAちゃんと同じクラスで同じ幼稚園出身のBちゃんが、
一緒に下校しているのを見掛けた。
声を掛けて、仲間に入れてもらおうかと迷ったが、
すでに出来上がっている二人の雰囲気に入りずらさを感じ、
その日は一人で帰ることにしたRちゃん。
その日の晩のこと。
Rちゃん『ねえねえ、おかあさん。学校でねぇ、不思議なことがあったんだよ。』
Rちゃんの母親『不思議なこと?』
Rちゃん『うん。幼稚園の時にAちゃんっていたでしょ?』
Rちゃんの母親『ああ、Aちゃんね。あの子って確か・・・』
Rちゃん『そう、引っ越したはずだよね?』
Rちゃんの母親『R、餞別のお手紙とお菓子もらってたでしょ?』
Rちゃん『そうなんだけどぉ~・・・』
Rちゃんの母親『Aちゃんがどうかしたの?』
Rちゃん『同じ学校の隣のクラスにいるんだあ。』
Rちゃんの母親『えっ!?入学式の日にはAちゃんのお母さん、見掛けなかったわよ?』
Rちゃんの住まう地域は子供の数が少なく、
顔見知りのママ友を見逃すはずはなかった。
Rちゃんは嘘を言って親をからかったりするタイプの子でもない。
Rちゃんの母親『変ねえ~・・・』
気になった母親は次の日、
Aちゃんと同じクラスの女の子の母親であるママ友に聞いてみることにした。
しかし、『Aちゃん?いなかったよ』とのこと。
その日の夕食時、
Rちゃんの母親『R、明日ね、BちゃんにAちゃんと何話したか聞いて来てくれない?』
Rちゃん『うん!わかった!』
次の日、
RちゃんはBちゃんにあの日、Aちゃんと何を話したのかを聞いてみたが、
よく覚えていないという。
加えて、BちゃんもAちゃんが何故、
同じ学校に登校してきているのかを不思議に思っていたそうだ。
ただ、この日を境にAちゃんの姿は見掛けなくなったのだという。
幼稚園の頃、RちゃんとAちゃんはとても仲が良く、
同じ学校に上がるのを非常に楽しみにしていた。
もしかすると、Aちゃんは引っ越し先の見知らぬ子供達の中で一人寂しかったのだろう。
ゆえに、Rちゃんと同じ学校に通いたいと思う強い気持ちが飛んできて、
それが、生霊となって姿を見せたのかもしれない・・・
姿を見掛けなくなったということは、
つまり、引っ越し先の小学校で新しい友達ができたのではないだろうかと想像してみる。