H子氏がモラハラ男と交際していた時のことである。
念のため、「モラハラ」について説明しておこう。
「モラハラ」とは「モラルハラスメント」の略であり、
肉体的な暴力ではなく、
言葉や態度等によって行われる精神的な暴力のことである。
モラハラを日常的に受けた人間は、
ある種危険な洗脳状態(マインドコントロール状態)に陥ってしまい、
最悪、メンタルクリニック等へ通院し、
長期療養を必要とする場合がある。
この行為を行う人間の特徴として、
最も多く挙げられている代表的なものが、
「社会的地位が高い人間」、「高学歴な人間」とされている。
さて、ここからが本題である。
モラハラ男は交際以前は優しくて明るい人物であった。
しかし、交際が始まると次第にH子氏に対する態度が変わっていった。
いきなり態度が豹変したのではなく、
だんだん、だんだんと飴と鞭を使いわけるように、
じわじわと彼女を洗脳するようにそれは始まったのだ。
初期段階では優しく嫌味を言うことから始まり、
次第にそれはエスカレートしていき、
交際開始から半年後には、暴力を振るうようになった。
所謂、「ドメスティックバイオレンス(DV)」へと発展したのだ。
この頃、H子氏は「私が悪いから怒られるんだよね」と、
思い込むようになってしまっていた。
ねっとりとした嫌味と軽い暴力が繰り返されていたある日のこと。
モラハラを受けたH子氏が罪悪感に苛まれて謝罪していると、
彼女の脚をモラハラ男は革靴を履いた状態で踏み付けようとした。
だが、踏まれる寸前、
モラハラ男の頭部に鳥の糞がボトッと落ちた。
空を見渡しても鳥など、どこにもいない・・・
別の日。
モラハラ男の部屋で一緒に過ごしていた時のこと。
他愛のないことで男は怒り出し、
H子氏に向かって手を振り上げた瞬間、
棚の上に置いてあった物が落下し、男の頭部を直撃した。
この時、男は棚の近くに居たわけではなかった。
これ以外にもH子氏の窮地を救うかのように、
不思議な現象が相次いだのだ。
モラハラ男が熱いお茶をかけようとした瞬間、
コップの取っ手が破損し、自身に熱いお茶がかかる。
ライターを投げ付けようとした瞬間、
自然にライターが着火して、
その火が衣服に燃え移り、軽い火傷を負う。
菜箸で挟んだゆで卵を投げつけようとした瞬間に、
卵が突然爆発して、破片が右目を直撃し負傷。
SNSにH子氏の誹謗中傷を書き込もうとして、
スマートフォンが故障するなど・・・
こういった現象が次々とモラハラ男を襲うようになり、
やがて男は心身ともに疲弊していった。
そんなある日、モラハラ男はH子氏にこう言った。
モラハラ男『最近、夢に変な婆さんが出てくる』
その日の晩、
H子氏の夢にも聞き慣れない方言を使う、
見知らぬ老婆が現れて、こう言った。
老婆『あぁあぁ、いだましいこどっ。えぇっこっんな痩せちまっで…ひょろひょろでねぇの。』
老婆『ほんだからなんどもいってっぺぇ、あ゛んなろぐでもねおどこやめっで、なっ』
妙に印象に残る夢だった。
続く